【2025年版】llms.txt とは?メディアサイトでの導入メリットと設置方法を解説
生成 AI の普及により、ユーザーの情報検索行動が大きく変化しています。従来の Google 検索から、AI チャットボットを活用した情報収集へとシフトする中で、メディアサイト運営者には新たな対応が求められています。
この記事では、AI 時代のメディア戦略として注目される「llms.txt」について、導入メリットや具体的な設置方法を詳しく解説します。
生成 AI によってて変化する顧客の行動
生成 AI の普及に伴い、ウェブを使った情報検索の方法が変化しつつあります。これまでは Google などの検索サービスに質問やキーワードを入力し、表示されたページのリストから知りたい情報がありそうなページやサイトを見つけていく行動が一般的でした。しかし生成 AI の登場により、検索と情報収集を AI に任せて、その結果や回答に添付されたページにのみアクセスするような調査スタイルが増えつつあります。
実際、調査会社 Gartner は検索エンジンの利用動向について、「2026年までに従来型の検索エンジン利用は25%減少する」という予測を 2024 年に発表しています。従来の「検索エンジンでキーワード検索 → 複数のサイトを比較検討」という流れから、今後「 AI に質問→ AI がユーザーに変わって検索を実施 → 検索結果に基づく回答を取得」へと行動が変化していく可能性について、すでに様々な企業やメディアが注視し始めています。
このような行動の変化に対して、メディアサイトにとって新たな対応策が求められています。そんな中、注目を集めているのが「llms.txt」です。
llms.txt の基本的な仕組み
llms.txt は、生成 AI がウェブサイトの情報を効率的に参照できるようするための標準実装として提案されているものです。2024年9月に Answer.AI の共同創業者である Jeremy Howard 氏により提案されました。
llms.txt は、ウェブサイトのルートディレクトリ(/llms.txt
)に配置する Markdown 形式のファイルです。AI が質問に回答する際や情報を参照する際に、サイトの構造や重要な情報を効率的に把握できるよう支援します。
従来、AI がウェブサイトから情報を取得する際は、HTML ページ全体を解析する必要がありました。しかし、ナビゲーション、広告、JavaScript などの要素が含まれると、AI の処理能力(コンテキストウィンドウ)の制限により、効率的な情報取得が困難でした。llms.txt は、AI に必要な情報を構造化された形で直接提供することで、この問題を解決します。
robots.txt や sitemap.xml との違い
llms.txtは AI、つまり bot に向けた情報提供を目的にしています。この用途では、すでにrobots.txt や sitemap.xml などが情報を提供しているため、これらを利用できないかと考える方も少なくありません。しかしこれらのファイルと、 llms.txt はその目的やユースケースが大きく異なることに注意が必要です。
ファイル名 | 主な目的 | 対象 | 記述内容 |
robots.txt | アクセス制御 | 検索エンジンクローラー | クロール許可・制限の設定 |
sitemap.xml | ページ一覧の提供 | 検索エンジン | サイト内全ページのリストとメタデータ |
llms.txt | 効率的な情報理解 | 生成 AI | サイトの重要情報と構造を Markdown で記述 |
robots.txt は、検索エンジンのクローラーに対するアクセス許可・制限を設定します。そして sitemap.xml は、検索エンジンに対してサイト内のページリストとメタデータを提供するために提供されています。つまり robots.txt は「どこにアクセスして良いか」を制御し、sitemap.xml は「どのページが存在するか」を伝えるために使われているといえます。
一方で llms.txt は、「AI がサイトを理解するために必要な情報はどこにあるか」を伝える役割を果たします。 robots.txt や sitemap.xml は生成 AI が内容を読むことをあまり想定していません。そのため、規模の大きいサイトなどでは、AI がサイトの構造を理解するために 膨大な sitemap.xml を読み込み、トークン数の上限を超過してしまうような問題が発生します。しかし、生成 AI が処理できるように sitemap.xml に記載する内容を減らすことは本末転倒です。このような問題を解決するため、生成 AI への対応に特化した llms.txt を用意することが重要となります。
llms.txt がメディアサイトにもたらすメリット
メディアサイトに llms.txt を導入することで、以下のメリットが期待できます。
生成 AI による情報参照効率の向上
llms.txt により、AI がサイトの重要なコンテンツに迅速にアクセスできるようになります。従来は HTML 全体の解析が必要でしたが、構造化された情報を直接提供することで、AI の処理効率が大幅に向上します。その結果、AI がユーザーの質問に対してより適切で詳細な回答を提供する際に、サイトのコンテンツが参照される可能性が高まります。
サーバー負荷軽減とコスト削減効果
llms.txt により AI クローラーが効率的に情報を取得できるため、不要な複数ページへのアクセスが削減されます。また、txt ファイルとして静的に配置することができれば、 PHP やデータベースへのクエリなども発生することがなくなり、サーバへの負荷が軽減されます。生成 AI に質問されることの多い情報、ニュースや専門知識、または AI コーディングにて参照される可能性の高いコンテンツなどでは、 AI によるアクセスでのサーバ負荷増大リスクを削減できるでしょう。
llms.txt はすでに大手 SaaS 企業などが導入済み
llms.txt はできたばかりの規格ではなく、すでに海外のウェブサイトでの導入が始まっている仕組みです。例えば決済 / FinTech サービスの Stripe では、 llms.txt の配置に加えて、クロールしてきた生成 AI に向けて、「LLM ですか? llms.txt を読んでください。」と案内するリンクをページに追加しています。

また、 CDN やセキュリティ方面で著名な Cloudflare も、ドキュメントサイトに llms.txt へのリンクを用意し、導入に向けた情報収集などで生成 AI が効率的にサイトの情報を取得できるように支援をしています。

このように、生成AIに見て欲しい情報を効率的に発見してもらうための手段として、llms.txt の活用が広がり始めています。生成 AI が効率的に情報を見つけることができるようになることで、顧客が知りたいと思う情報に効率的にアクセスできるようになり、それによって顧客がこれまで知らなかったコンテンツや商品、サービスなどを見つけやすくなります。また、生成 AI によるクロール時のサーバー負荷を下げることにもつながりますので、ウェブサイトの負荷やインフラコストの削減なども期待できるでしょう。
メディアサイト向け llms.txt の記述内容と作成ポイント
メディアサイトで llms.txt を効果的に活用するためには、適切な記述内容の設計が重要です。
基本的な記述項目
メディアサイトの llms.txt には、以下の項目を記載することを推奨します。
- サイト名と概要:メディアの専門分野やミッション
- 主要カテゴリー:取り扱うトピックの一覧
- 編集方針:記事の信頼性や編集基準
- 著者情報:専門家や編集者の紹介ページ
- 連絡先:問い合わせ先や運営者情報
- 利用規約:コンテンツの引用や利用条件
以下は、BtoB メディアサイトでの llms.txt 記述例です。
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## 主要コンテンツ
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## 編集方針・信頼性
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## 運営情報
- [会社概要](https://example.com/company/): 運営会社の詳細情報
- [お問い合わせ](https://example.com/contact/): 取材依頼・広告掲載について
避けるべき記述内容
llms.txt の効果を最大化するため、以下のような内容は記載しないようにしましょう。
- 過度な宣伝文句や不正確な情報: ユーザーに過剰な期待やサービスへの誤解を与えることにつながります。生成 AI の情報に基づいてユーザーがクレームを出す恐れがありますので、事実に基づいた内容を書くように心がけましょう。
- 頻繁に変更される情報: 特定のキャンペーンなど、すぐに古くなる情報は除外しましょう。終了したキャンペーン情報などを生成 AI が紹介することにより、ユーザーの誤解をうむ可能性があります。
- 個人情報や機密情報: プライバシー・セキュリティの観点からも、公開可能な情報だけを掲載しましょう。
WordPress サイトで llms.txt を設置する方法
WordPress を利用している場合、いくつかの方法で llms.txt を設置できます。
静的ファイルを直接配置する
まず最もシンプルな方法は、 FTP によるファイルアップロードです。 llms.txt は Markdown 記法で記述されたテキストファイルです。そのため、サイトの概要や構造などの変化することが少ない内容に絞って、 CMS の外側でファイルを生成することも可能です。導入効果のテストを行いたい場合や、開発・テストにリソースやコストを割り当てることが難しい場合は、静的ファイルを直接配置する方法をお試しください。
なお、お使いのサーバーによっては、静的に配置したファイルへのアクセスを処理するため、次のような .htaccess を追加する必要があります。 Nginx など Apache 以外のサーバーをお使いの場合は、この設定をベースにお使いのサーバーに合わせた設定へ変更しましょう。
<Files "llms.txt">
Header set X-Robots-Tag "llms-txt"
Header set Cache-Control "public, max-age=86400"
</Files>
WordPress プラグインで対応する
すでにいくつかの WordPress プラグインがサードパーティの開発者によって公開されています。 Shifter では、「LLMs.txt for WP」プラグインによる生成をサポートしておりますが、それ以外にも「llms.txt」にて検索することで様々なプラグインから最適なものを選ぶことができます。
プラグインによって生成できるファイルの種類や内容の違いがある様子ですので、テスト環境などで動作をご確認の上、要件にあったプラグインを選ぶようにしましょう。
Edge Computing での対応
最後の方法は、最近増えつつある CDN エッジロケーションを活用した方法です。 Amazon CloudFront に設定できる Lambda@Edge や、 Cloudflare Workers などを利用して、Stripe の事例のように .md
の拡張子を含むリクエストでは Markdown 形式のレスポンスを返すように実装します。この方法は WordPress の外側で実装やテストを行えることがメリットで、カスタムの要件を満たしつつ WordPress 側の保守コストを最小化する方法を探しているユーザー向けと言えるでしょう。
llms.txt をテストする方法
llms.txt を試すのは簡単です。llms.txt
の URL をコピーし、Claude などの生成 AI チャットに貼り付けてみましょう。URL を参照できるチャットサービスであれば、自動的にページにアクセスして内容を説明してくれます。
もし URL へのアクセスができない場合は、llms.txt ファイルをダウンロードして、添付ファイルもしくは中身をコピーアンドペーストする形でチャットに追加してみましょう。AI がどのようにサイトの情報を理解するかを直接確認できるため、導入効果を実感しやすくなります。
llms.txt でメディアサイトの AI 対応を始めよう
llms.txt は、AI 時代におけるメディア運営の新しい基盤技術として注目されています。適切に導入することで、AI による情報理解の促進、ブランド価値の向上、将来的な AI 連携の基盤構築といったメリットが期待できます。
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参考記事はこちら
- The /llms.txt file – llms-txt(https://llmstxt.org/)
- LLMOで注目される「llms.txt」とは?書き方やメリット・効果を解説(https://mediareach.co.jp/blog/llms-txt)
- LLM最適化の新標準「llms.txt」とは?ウェブサイトのAI対応を加速(https://www.centered.co.jp/blog/llms-ai-optimization/)
- 急増するAIクローラー対策として「llms.txt」を導入してみた(https://dev.classmethod.jp/articles/llms-txt-for-ai-crawlers/)
- llms.txt を生成、デプロイをする(https://ja.getshifter.io/shifter-support-documents/integration/generate-deploy-llms-txt)
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