WordPress on AWS で「ゾーン障害」に備える ── 可用性設計の実践

WordPress on AWS で「ゾーン障害」に備える ── 可用性設計の実践

WordPress サイトのホスティング環境は、大きく「レンタルサーバ」と「クラウドサーバ」に分かれます。レンタルサーバは設定が容易で費用も抑えられる反面、スペックや構成の自由度には限界があります。一方、クラウドサーバは柔軟なスケーリングと高いカスタマイズ性を持ち、トラフィックの増減に対応しやすい特徴があります。

その中でも AWS(Amazon Web Services)は、世界的なシェアを持つクラウドプラットフォームとして、企業の本番 WordPress 環境に多く採用されています。高い信頼性・豊富なサービスメニュー・グローバルなインフラが選ばれる主な理由です。

ただし、「AWS を使っているから安心」と思っていませんか。AWS 自体の信頼性は高いですが、それはプラットフォームとして落ちにくいという意味であって、「あなたのサイトが止まることはない」という保証ではありません。

AWS のインフラはアベイラビリティゾーン(以降、AZ と表記)という単位で構成されており、特定の AZ で停電・水害・地震・火災などによる障害が発生したとき、その AZ に依存したリソースは止まります。本記事では、AZ 障害が WordPress に具体的にどう影響するか、そしてどのような構成で備えられるかを解説します。

アベイラビリティゾーン(AZ)とは

AWS のリージョンは複数の AZ で構成されています。AZ とは、独立した電源・ネットワーク・物理施設を持つ 1 つ以上のデータセンターの集合です。同一リージョン内の AZ どうしは最大 100km 程度の距離を保ちながら、シングルデジットミリ秒の低レイテンシで接続されています。

この設計の目的は「共通の障害原因を持たないこと」です。1 つの AZ に障害が発生しても他の AZ には波及しないよう設計されており、AWS はアップデートのデプロイにおいても AZ をまたいだ同時展開を避けることで障害の連鎖を防いでいます。

東京リージョン(ap-northeast-1)には、2026年4月現在 4つの AZ があります。

ゾーン障害が WordPress に与える影響

特定の AZ が障害状態になると、そこに属するリソースは一時的に停止・到達不能になります。WordPress 運用の観点から、影響が出る主なリソースを整理します。

Web サーバ(EC2)

WordPress の Web サーバーが単一 AZ の EC2 インスタンス 1 台で稼働している場合、その AZ の障害でサイトへのアクセスが全停止します。EC2 インスタンスは特定の AZ に紐づいており、障害時に他の AZ へ自動移動することはありません。

データベース(RDS シングル AZ)

RDS をシングル AZ で構成している場合、そのゾーンの障害でデータベースが停止します。WordPress は MySQL / MariaDB への接続に失敗し、ページが表示できなくなります。

RDS をマルチ AZ で構成している場合は、プライマリとは別の AZ にスタンバイインスタンスが存在し、障害時に自動フェイルオーバーします。フェイルオーバー完了まで通常 60〜120 秒程度かかりますが、完全停止の時間は大幅に短縮されます。

共有ファイルストレージ(EFS)

WordPress の wp-content を Amazon EFS に置いている場合、EFS 自体はリージョンスコープのサービスであり AZ 障害の影響を直接受けません。ただし、障害 AZ 内の EC2 インスタンスからのマウントが使えなくなるため、そのインスタンスはファイルにアクセスできなくなります。

可用性を高める基本的な構成パターン

ゾーン障害への対策として有効な構成の組み合わせを紹介します。

Application Load Balancer(ALB)+ 複数 AZ への EC2 分散

ALB は複数の AZ にまたがってリクエストを分散します。ある AZ の EC2 インスタンスが停止しても、ALB が正常な AZ のインスタンスへリクエストを振り向けます。ALB 自体も複数 AZ に冗長化されているため、単一 AZ の障害で ALB が止まることはありません。

Auto Scaling グループを組み合わせることで、インスタンスの停止を検知した際に別の AZ で自動的に起動し直す構成を取れます。

RDS マルチ AZ

マルチ AZ 構成の RDS は、プライマリとは別の AZ にスタンバイインスタンスを持ち、同期レプリケーションを行います。WordPress 側の接続先は RDS のエンドポイント(DNS 名)のまま変わらないため、アプリケーション側の設定変更なしにフェイルオーバーが完結します。

ElastiCache マルチ AZ(オプション)

オブジェクトキャッシュとして ElastiCache(Redis)を使っている場合、マルチ AZ 構成にすることで AZ 障害時のキャッシュ消失を防げます。大規模サイトやリクエスト数が多いサイトでは検討に値します。

構成を選ぶ前に整理すること

マルチ AZ 構成は費用が増加します。RDS マルチ AZ は同サイズのシングル AZ に対しておよそ 2 倍のコストになり、EC2 も複数インスタンス分の費用がかかります。構成を決める前に、次の点を整理することを推奨します。

コーポレートサイトで数時間の停止が許容できるケースもあれば、EC サイトや会員制メディアで数分の停止も許容できないケースもあります。可用性設計は要件次第であり、「どこまで備えるか」は費用対効果を踏まえた経営判断でもあります。

マネージドサービスという選択肢

AWS上でWordPressの冗長化を実現するには、幅広い領域にまたがる高度な技術力が求められます。ネットワーク設計(VPC・セキュリティグループ)、ALB による負荷分散、Auto Scaling、RDS のマルチ AZ 構成、共有ストレージ(EFS や S3)、キャッシュ戦略など、複数の AWS サービスを適切に組み合わせる設計力が必要です。加えて、WordPress 特有のファイル同期やプラグイン更新時の整合性など、アプリケーション側の考慮も欠かせません。

マルチ AZ 構成の設計・構築・継続的な監視を自社で完結させるには、これらの専門知識と運用体制が必要です。構成を誤ると、可用性を高めるつもりが逆に新たな障害原因を生み出してしまうこともあります。

社内にインフラ専任担当者がいない、あるいは WordPress に特化したインフラ知識を持つエンジニアを確保するのが難しいという場合は、Amimoto のような WordPress 向けに最適化された AWS インフラを提供するマネージドホスティングサービスの活用も選択肢の一つです。可用性設計の実装だけでなく、24時間365日の有人監視と障害時の対応を一括して委託できるサービスもあります。

まとめ

AWS は高可用なインフラですが、サイトの可用性は利用者側の設計に依存します。単一 AZ で WordPress を運用している場合、ゾーン障害でサイトが全停止するリスクがあります。ALB + 複数 AZ 分散・RDS マルチ AZ・Auto Scaling の組み合わせが基本パターンです。構成の選択は、許容できるダウンタイムとコストを天秤にかけた判断になります。

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