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WordPress プラグイン保守における Devin(AI コーディングエージェント)活用のポイント

WordPress プラグインの保守に社内リソースを取られすぎていませんか? PHP や WordPress のメジャーアップデート、顧客からの機能追加要望など、一度リリースしたプラグインには継続的なメンテナンスが必要ですよね。
私も長年 WordPress プラグインを開発・保守してきましたが、実際のところ、機能開発が安定した保守モードのプラグインにリソースを割くのは難しいものです。どうしても新機能開発が優先され、大きな問題が起きるまで放置してしまうこともあります。実際、Stripe CEO によるキーノートでは、開発者は保守作業に時間を持っていかれがちで、年間の持ち時間の半分もメインのミッションである開発に時間を回せていないという報告もあるほどです。
そこで今回注目したいのが、AI コーディングエージェントの活用です。特に Devin(Cognition Labs 開発の自律型 AI エンジニア)は、Slack や GitHub から指示を受けて要件を満たすまで開発を継続し、最終的に Pull Request を提出してくれます。単純なコード生成にとどまらず、CI のエラーを検知して自ら修正するなど、まるで一人のエンジニアのように振る舞う点が革新的です。
AI コーディングが抱える課題
しかし、AI コーディングは決して銀の弾丸ではありません。私も実際に使ってみて気づいたのですが、AI が持っている知識と実際の開発で求められる知識や経験に乖離がある場合、マージの判断に困る作業結果が提出されることがあります。
特に WordPress プラグイン開発では、この問題が顕著に現れます。経験上、まず遭遇するのは PHP 7 のサポートを打ち切らざるを得ない変更です。プラグイン設定で PHP 8 以上を必須にすることで対応はできますが、デジタルキューブのようなホスティングサービスが提供するプラグインの場合、その影響範囲を慎重に調査する必要があります。
意図しない作業結果を受け取ると、AI のコーディング時間や利用料に基づくコストを失うだけでなく、修正指示を出す人間の時間コストやストレス、信頼性低下による確認工数の増加など、さまざまな問題が派生してしまいます。
テストと CI で品質を担保する
この問題を未然に防ぐ有効な方法の一つが、テストの実装と CI の設定です。
テストを書くことで、既存の実装や振る舞いを破壊していないかをすぐに気づけるようになります。また、CI でテストを実行することで、Devin などのコーディングエージェントがミスを犯したことを AI 自身が気づけるようになります。

Devin のようなコーディングエージェントは Pull Request 作成後、CI 実行結果を監視します。もし CI が失敗した場合は、そのログから何を壊したかを自分で調査し、問題解決のための作業を追加で行い、最終的に CI がパスするまで自律的に作業してくれます。
実際の導入事例
デジタルキューブの C3 CloudFront Cache Control プラグインでは、PHP 7 とPHP 8 どちらでもテストが失敗しないかをテストしています。これによって Devin が意図しない変更を入れていないかを GitHub Actions で検知できます。

Pull Request のステータスでチェックできるので、マージするかどうかの判断にも使えますし、Devin 自身が気づいて修正してくれるというメリットもあります。
コードレビューは必須
ただし、完全に AI に任せきりにするのは危険です。過去に別のコーディングエージェントでは「テストコードを修正して解決する」という提案をしてきたことがありました。このような問題があるため、提出された Pull Request のコードレビューは必須です。
コードレビューの負荷を下げるには、Devin に指示するタスクの粒度をできるだけ小さくする必要があります。大きなタスクをいきなり投げるのではなく、小さく分割して段階的に進めることが重要です。
タスク分解にも AI を活用
実は、タスクの粒度分解にも生成 AI が活用できます。例えば Backlog でコミュニケーションをしている場合、Backlog MCP を Claude や Cursor などの MCP(Model Context Protocol)に対応した生成 AI チャット機能を持つツールで要件の整理やタスクの分解を事前に行えます。

また、Devin の Devin Search を利用して、事前に実際のコードから実装計画を立てることもできます。
現時点でのベストプラクティス
2025年9月時点の AI コーディングエージェントでは、できるだけマイクロマネジメントでタスクを指示するような考え方と、テストや CI によるガードレールを用意する方法のどちらか or どちらかで対応されることをお勧めします。
「AI が全部やってくれる」という期待は一度置いておいて、「AI を効果的に使うために人間が何をするべきか」という視点で取り組むと、より良い結果が得られるでしょう。
WordPress プラグインの保守作業は地味で時間のかかる作業ですが、適切に AI コーディングエージェントを活用することで、本来やりたい新機能開発により多くの時間を割けるようになります。まずは小さなタスクから始めて、徐々に AI との協働スタイルを確立していくことをお勧めします。
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