WordPress 保守の予算を通すための「数字の作り方」

WordPress 保守の予算を通すための「数字の作り方」

WordPress サイトの保守・運用に必要な予算をどう説明すればいいか ── そこで詰まった経験はありませんか。担当者にとっては当たり前の保守・運用コストが、経営層やクライアントには「なぜそんなにかかるのか」と映ることがあります。同じサイトを前にしていても、見ている視点が違えば、コストの必要性は伝わりません。

この記事では、WordPress 保守にかかるコストを体系的に整理し、意思決定者に伝わる形で可視化するための考え方と項目を紹介します。具体的な金額の算出には自社の状況を当てはめる必要がありますが、何を洗い出すべきかのフレームワークとして活用してください。

なぜ保守コストは「見えにくい」のか

WordPress の保守コストが可視化しにくい理由の一つは、コストが複数の場所に分散していることです。サーバ費用は情報システム部門、作業工数は Web 担当者の人件費、緊急対応は外部ベンダーの請求書、というように、それぞれが別の予算枠に入っていて、合算されることがないまま運用されているケースが少なくありません。

もう一つの理由は、保守をしないことのコストが計上されていないことです。アップデートを怠った結果として起きたサイト障害の復旧対応、セキュリティインシデントへの対処、担当者が退職した際の引き継ぎ工数などは「保守費用」として予算化されていないものの、実際には相当なコストが発生しています。

保守コストを構成する 4 つの層

WordPress の保守コストは大きく 4 つの層に分けて考えると整理しやすくなります。

1. インフラコスト(月次・固定)

ホスティング費用、SSL 証明書、ドメイン維持費など、サイトを動かし続けるために発生する費用です。CDN や WAF を導入している場合はその利用料も含まれます。クラウド環境では従量課金部分もあるため、月次の実績値を記録しておくことが重要です。

2. 定常作業コスト(月次・変動)

WordPress コアのアップデート、プラグイン・テーマのアップデート、バックアップの確認、セキュリティログの確認など、定期的に発生する作業の人件費換算です。

ここで重要なのは、作業時間を金額に換算することです。担当者の時間単価(年収 ÷ 年間稼働時間の概算)を掛け合わせると、その作業の経済的なコストが見えてきます。社内担当者の工数は「タダ」ではなく、機会コストが存在します。

参考として、当社がこれまで支援してきたプロジェクトの経験値をもとにすると、プラグイン数が 20〜30 本程度の標準的な企業サイトで、定常的な保守作業(アップデート確認・適用・動作確認)に月 3〜8 時間程度かかるケースが多く見られます。担当者の時間単価を仮に 10,000 円とすると、月 30,000〜80,000 円の人件費コストに相当します。

※ これは当社での経験値をもとにした目安です。プラグイン数・サイト構成・運用体制によって大きく異なります。

3. 突発対応コスト(年次・不規則)

プラグインの競合によるサイト障害、不正アクセスへの対処、WordPress メジャーアップデート時の互換性検証、担当者交代に伴う引き継ぎ作業など、予測しにくいが繰り返し発生するコストです。

過去 2〜3 年の実績を振り返り、「年に何回、1 回あたり何時間かかったか」を集計すると、平均的な年次コストとして計上できます。実績がない場合はゼロではなく「不明」として扱い、リスクとして明示する方が正確です。

4. 機会損失コスト(潜在的・定量化困難)

サイトが止まった時間に発生した問い合わせの喪失(EC サイトであれば売上損失、ブランドへのダメージなど)、これらは直接的には計上されないコストです。定量化は難しいものの、意思決定者に保守投資の必要性を伝える際には具体的な試算が手がかりになります。

「1 時間のサイト停止で発生しうる損失額」を概算しておくと、保守投資の必要性を説明する根拠になります。たとえば「月間 PV が 10 万、コンバージョン率 1%、平均客単価 5,000 円のサイトでは、1 時間の停止で最大数十万円の機会損失が生じうる」という試算を持っておくと、コストの話をするときの共通の土台になります。

「現状コスト」と「委託コスト」を比較する表を作る

コストの可視化が完了したら、次のステップは現状維持のコストと外部委託のコストを並べた比較表を作ることです。

経営層やクライアントの決裁者が見たいのは「どちらが安いか」だけではなく、「リスクをどちらが負うか」「担当者が変わっても運用が継続できるか」という観点も含まれます。比較表には以下の軸を盛り込むと説得力が増します。

社内運用外部委託
月次費用(確定額)人件費按分+インフラ費委託料(固定)
突発対応費用都度発生(予測困難)プランに含む場合あり
属人性リスク担当者退職で途絶えるリスクあり委託先が継続
技術的な専門性担当者のスキルに依存専門チームが対応
対応速度担当者の稼働状況に依存SLA で担保される場合あり

この表は「社内でやるべきか、外部に任せるべきか」という判断を促すツールではなく、現状のコスト構造を明示して議論を始めるための資料として機能します。

数字を作るときの注意点

保守コストの可視化で陥りやすい落とし穴を 2 つ挙げます。

「保守不要」の状態は存在しない

「特に何もしていないからコストはほぼゼロ」という認識は危険です。アップデートを適用していない WordPress はセキュリティリスクを抱えており、「何もしない」こと自体が将来の突発対応コストを積み上げている状態です。現状のコストがゼロに見えるなら、それは「潜在コストが可視化されていない」と理解してください。

人件費は「按分」で計上する

担当者が WordPress の保守に専任していることはまずありません。月間の業務時間のうち保守に充てている割合を概算して按分するのが実態に近い計上方法です。「他の業務もあるからゼロで計上」ではなく、たとえば「業務時間の 15% 程度を保守に使っている」という概算でも、数字として出すことが誠実な可視化です。

自社での可視化が難しい場合

コストの棚卸しを進めようとすると、「そもそも何が保守に含まれるかが曖昧」という壁にぶつかることがあります。保守の範囲が明確になっていなければ、コストも正確に計上できません。

そうした場合、外部の WordPress 専門チームへの相談が整理の糸口になります。「保守として何をすべきか」の範囲定義から始め、どこを内製し、どこを委託するかを決める順番が、コスト可視化の第一歩です。

LabWorks では WordPress 保守に関する相談窓口を設けており、現状のヒアリングから保守範囲の整理、内製・外部委託の比較検討まで一緒に進めることができます。なお、WordPress サイトの保守・運用に関する正式なお見積もりは、サイトの構成・規模・プラグイン数・運用体制などを確認したうえでご提示することになります。まずは現状をお聞かせいただくところから始められますので、「何が保守の範囲か」「自社のコストはどう整理すればいいか」という段階からお気軽にご相談ください。

まとめ

WordPress の保守コストを意思決定者に説明するには、インフラコスト・定常作業コスト・突発対応コスト・機会損失コストの 4 層に分けて整理するのが有効です。社内担当者の工数を金額換算し、突発対応の過去実績を加えることで、「保守にかかっている本当のコスト」が見えてきます。その数字を外部委託コストと比較することで、判断のための材料になります。

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