
レンタルサーバから AWS への移行を検討している企業の IT 担当者の方も多いのではないでしょうか。サイトの拡大やセキュリティ強化を背景に、より高性能で柔軟なインフラが求められています。
しかし、「AWS で WordPress を運用するには何が必要なのか」「費用はどの程度かかるのか」といった疑問をお持ちの方も少なくありません。
本記事では、AWS で WordPress を構築する2つの方法について、メリット・デメリットから具体的な手順まで詳しく解説します。実際の構築作業で迷わないよう、ステップバイステップで説明しているため、AWS 初心者の方でも安心して取り組めるでしょう。
目次
AWS で WordPress を構築するメリット
AWS を活用することで、従来のレンタルサーバでは実現できない多くの利点を享受できます。企業サイトの運用において重要な6つのメリットを見ていきましょう。
サイトの高速化と安定した運用が可能
AWS の高性能なインフラストラクチャを利用することで、従来の共有サーバでは実現できない高速なページ読み込み速度を実現できます。CPU やメモリなどのリソースを独占的に使用できるため、他のサイトの影響を受けることがありません。
CDN サービスの CloudFront と組み合わせることで、さらなる高速化も可能になります。静的コンテンツを世界各地のエッジサーバにキャッシュし、ユーザに最も近い場所からコンテンツを配信することで、劇的な表示速度の向上を実現します。
デジタルキューブでは WordPress 専用の AWS クラウドホスティング「Amimoto」を提供しております。AWS 上で最適化されたサーバと CDN を活用し、高速なレスポンスタイムを実現しています。サーバ管理は Amimoto に任せることで、安心してコンテンツ制作に集中できます。WordPress サイトの表示速度向上をお求めでしたら、WordPress 専用のクラウドホスティングをご検討ください。
アクセス増加にも柔軟に対応できるスケーラビリティ
Auto Scaling やロードバランサを活用すれば、急激なアクセス増加にも自動的に対応できます。バイラルコンテンツによる予期しないトラフィック急増や、キャンペーン時のアクセス集中にも安心です。
サーバ負荷に応じてインスタンス数を動的に調整し、サイトダウンを防ぎながら安定したサービス提供を維持できます。スケールアップ・スケールダウンは自動化されるため、手動での対応は不要です。
高度なセキュリティ対策で安心して運用できる
WAF や Shield による DDoS 攻撃対策、VPC によるネットワーク分離、IAM による細かな権限制御など、企業レベルのセキュリティ機能を利用できます。金融機関や政府機関でも採用される強固なセキュリティ基盤を活用可能です。
定期的なセキュリティアップデートも自動化することで、より安全な運用を実現できます。脆弱性への対応も迅速に行われるため、セキュリティインシデントのリスクを大幅に軽減します。
コストを抑えつつ効率的な運用ができる
従量課金制により、実際に使用したリソース分のみの支払いで済みます。固定費ではなく変動費として管理できるため、サイトの成長に合わせた段階的な投資が可能です。
Reserved Instance や Spot Instance を活用すれば、さらなるコスト削減も可能です。不要な時間帯にはインスタンスを停止して費用を節約でき、深夜帯のメンテナンス時間などを有効活用できます。
自由度の高いカスタマイズと運用が可能
root 権限での完全な制御が可能で、任意のソフトウェアやライブラリをインストールできます。レンタルサーバでは制限されがちなカスタマイズ(PHP バージョンの変更、Apache/Nginx の設定変更、独自の PHP 拡張モジュールの追加、システムレベルでのセキュリティ設定など)も自由自在に行えます。
開発環境から本番環境まで同一構成で管理でき、DevOps の実践にも最適です。独自の要件に合わせた柔軟なシステム構築が実現可能で、ビジネスの成長に合わせてシステムを進化させられます。
グローバルなユーザにも快適な環境を提供できる
世界中にある AWS のリージョンを活用することで、ユーザに最も近いサーバからコンテンツを配信できます。アジア、ヨーロッパ、アメリカなど、主要地域にサーバを配置し、地域特性に合わせた最適化が可能です。
CloudFront のエッジロケーションにより、地理的な距離による遅延を最小限に抑え、世界中のユーザに高速なアクセス環境を提供できます。国際的なビジネス展開を見据えた基盤構築にも対応します。
AWS で WordPress を構築するデメリット
AWS の多くのメリットがある一方で、導入前に理解しておくべきデメリットも存在します。適切な判断のために、主要な課題を確認しておきましょう。
サーバ構築や運用に一定の技術知識が必要
従来の共有ホスティングとは異なり、Linux や Apache の設定、セキュリティパッチの適用など、サーバ管理の知識が必要になります。コマンドラインでの操作に慣れていない場合、学習コストが発生します。
初心者には学習コストが高く、運用開始までに時間がかかる場合があります。適切な設定を行わないとセキュリティリスクも生じるため、基礎的な知識習得は必須です。
従量課金制でコストが見えにくくなりやすい
使用量に応じた課金のため、月額固定の共有サーバと比べて料金予測が困難です。トラフィックの増加やデータ転送量の変動により、予想以上の請求が発生する可能性があります。
予期しない高額請求を避けるため、課金アラートの設定や定期的な使用量チェックが必要です。適切な設定をしないと想定以上のコストがかかる可能性があるため、監視体制の構築は重要になります。
トラブル時のサポートが限定的
基本プランでは技術サポートが制限されており、WordPress 固有の問題は自力で解決する必要があります。24時間365日のサポートを受けるには、有料プランへの加入が必要です。
有料サポートプランに加入するとコストが増加します。コミュニティやドキュメントを活用した自己解決能力が重要で、社内での技術力向上も求められるでしょう。
AWS に WordPress を構築する手段は3つある
AWS で WordPress を運用する方法は、主に Amazon Lightsail と EC2、AWS Marketplace の3つに分けられます。それぞれ特徴が異なるため、要件に応じて適切な選択を行うことが重要です。
Amazon Lightsail を利用する
初心者向けの簡単な VPS サービスで、WordPress のワンクリックインストールが可能です。複雑な設定を省略し、短時間で WordPress サイトを立ち上げられます。
月額固定料金で分かりやすく、必要最小限の設定で WordPress サイトを素早く立ち上げることができます。小規模サイトや個人ブログに最適で、AWS 初心者にとって最も取り組みやすい選択肢といえるでしょう。
EC2 を利用する
フルマネージドなクラウドコンピューティングサービスで、細かい設定やカスタマイズが可能です。インフラの詳細な制御が必要な場合に適しています。
高度なスケーリングやセキュリティ設定ができる反面、設定の複雑さと技術的な知識が必要になります。企業サイトや大規模サイトの構築に適しており、将来的な拡張性を重視する場合の最適解です。
AWS Marketplace の WordPress AMI を利用する
AWS Marketplace で提供されているWordPress 用の AMI(Amazon Machine Image)を使用する方法です。BitNami、Jetware、Click to Deploy などのベンダが提供する事前構築済みのWordPress環境を活用できます。
デジタルキューブでも「Amimoto AMI」を AWS Marketplace で提供しており、WordPress 専用に最適化されたサーバ環境を簡単に構築できます。nginx、PHP-FPM、MySQL が WordPress のパフォーマンスを最大化するよう事前設定されており、高速な WordPress サイトを短時間で立ち上げることが可能です。
WordPress、Apache、MySQL、PHP が最適化された状態で構築されており、EC2 よりも簡単に始められます。商用レベルのセキュリティ設定やパフォーマンス最適化が施されているため、企業サイトでの利用にも適しています。ただし、一部の AMI は有料であることや、ベンダー固有の設定が含まれる場合があるため、要件との適合性を事前に確認することが重要です。
Amazon Lightsail で WordPress を構築する手順
Lightsail を使用した WordPress 構築は、5つのステップで完了します。初心者でも迷わずに進められるよう、各段階を詳しく解説します。
ステップ①:AWS アカウントを作成してログイン
AWS 公式サイトからアカウントを作成し、クレジットカード情報を登録します。本人確認のため、電話番号認証も必要です。

アカウント作成後、AWS マネジメントコンソールにログインして Lightsail サービスにアクセスします。初回は無料利用枠が適用され、一定期間お得に利用できるため、コストを抑えた検証が可能です。
ステップ②:Lightsail で新しいインスタンスを作成
Lightsail ダッシュボードから「インスタンスの作成」をクリックし、WordPress のアプリケーションテンプレートを選択します。リージョンは東京を選択すると、国内ユーザへの配信速度が向上します。
インスタンスプランを選択し、必要に応じて静的 IP アドレスを設定します。作成完了まで数分程度かかるため、この間に次のステップの準備を進めておくと効率的です。
ステップ③:インスタンスにアクセスして WordPress を確認
作成されたインスタンスのパブリック IP アドレスにブラウザでアクセスし、WordPress の初期画面が表示されることを確認します。正常に表示されれば、サーバの基本設定は完了です。
Lightsail コンソールから直接SSH接続も可能で、サーバの詳細設定を行えます。ファイアウォール設定や SSL 証明書の導入など、高度な設定も後から追加できるため安心です。
ステップ④:WordPress にログイン
初期設定画面でサイトタイトル、管理者ユーザー名、パスワード、メールアドレスを設定します。サイトの基本情報となるため、慎重に入力しましょう。
セキュリティを考慮して、推測されにくいユーザ名とパスワードを設定することが重要です。設定完了後、管理画面にログインして動作を確認し、WordPress の基本機能が正常に動作することを確かめます。
ステップ⑤:必要な初期設定を行う
WordPress の基本設定、テーマの選択、プラグインのインストールを行います。サイトの目的に応じて適切なテーマを選択し、必要な機能をプラグインで追加します。
セキュリティプラグインの導入、バックアップ設定、SSL 証明書の設定などを実施し、本格運用に向けた環境を整備します。ドメインの設定も忘れずに行い、ユーザーにとってアクセスしやすい環境を構築しましょう。
EC2 で WordPress を構築する手順
EC2 を使用した WordPress 構築は、より技術的な知識が必要ですが、高い柔軟性を得られます。5つのステップで確実に進めていきましょう。
ステップ①:EC2 インスタンスを作成する
EC2 ダッシュボードから新しいインスタンスを起動し、Amazon Linux または Ubuntu を選択します。OS の選択により若干手順が異なるため、慣れているものを選択することをお勧めします。
インスタンスタイプは t3.micro から開始し、セキュリティグループで HTTP、HTTPS、SSH のポートを開放します。キーペアを作成してセキュアなアクセス環境を構築し、不正アクセスを防止します。
ステップ②:インスタンスに SSH 接続する
作成したキーペアを使用して SSH 接続を確立します。Windows の場合は PuTTY、macOS やLinux の場合はターミナルを使用します。
ターミナルまたは SSH クライアントソフトを使用し、パブリック IP アドレスに接続します。初回接続時はシステムのアップデートを実行し、最新の状態にします。セキュリティのため定期的な更新も重要になります。
ステップ③:LAMP 環境を構築する
Apache、MySQL または MariaDB、PHP をインストールして LAMP 環境を構築します。各コンポーネントのバージョン互換性に注意しながら、安定した組み合わせを選択します。
各サービスの起動設定と自動起動の設定を行い、PHP の動作確認を実施します。WordPress に必要な PHP 拡張モジュールも忘れずにインストールし、完全な実行環境を整えます。
ステップ④:WordPress をインストール
MySQL/MariaDB で WordPress 用のデータベースとユーザーを作成します。セキュリティを考慮して、適切な権限設定を行うことが重要です。
WordPress の最新版をダウンロードし、Apache のドキュメントルートに展開します。wp-config.php ファイルでデータベース接続設定を行い、ブラウザから初期設定を完了させます。
ステップ⑤:WordPress の初期設定を完了する
WordPress の設定画面でサイト情報と管理者アカウントを設定します。サイトの基本的な方針を決定する重要なステップです。
セキュリティプラグインのインストール、パーマリンク設定、テーマの選択を行います。SSL 証明書の設定とリダイレクト設定も実施し、セキュアな WordPress サイトの運用を開始します。
AWS で WordPress を構築する際の注意点
AWS 上で WordPress を運用する際に、特に注意すべき5つのポイントを解説します。事前に把握しておくことで、トラブルを未然に防げるでしょう。
WordPress のアップデート・保守は自分で行う必要がある
共有ホスティングとは異なり、WordPress コア、テーマ、プラグインのアップデートは手動で行う必要があります。セキュリティ関連のアップデートは特に重要で、迅速な対応が求められます。
セキュリティパッチの適用も含めて定期的なメンテナンス作業が発生します。アップデート前には必ずバックアップを取ることが重要で、万が一の際の復旧手順も事前に確認しておきましょう。
バックアップは自動化しておく
自動バックアップ機能がないためデータ損失リスクに備えて、WordPress ファイルとデータベースの自動バックアップを設定する必要があります。手動でのバックアップでは取得し忘れのリスクがあります。
AWS S3 への定期バックアップやスナップショット機能を活用し、復旧可能な体制を構築します。バックアップの動作確認と復旧テストも定期的に実施すべきで、いざという時に確実にデータを復元できる準備が必要です。
メール送信が制限されている点を確認
EC2 からの直接メール送信は制限されており、お問い合わせフォームやパスワードリセット機能が正常に動作しない場合があります。WordPress 標準のメール機能が使えないケースも存在します。
Amazon SES や SMTP サービスを利用したメール送信設定を行う必要があります。事前にメール機能の要件を確認しておくべきで、必要な場合は適切な代替手段を準備しておきましょう。
HTTPS 対応を忘れない
HTTPS での安全な通信を確保するため、SSL/TLS 証明書の設定は必須です。検索エンジンでもHTTPS 対応が重要視されており、SEO 面でも必要不可欠な設定となっています。
Let’s Encrypt の無料証明書や AWS Certificate Manager を活用できます。WordPress の設定で HTTPS リダイレクトを有効にし、検索エンジンでの SEO 評価向上も期待できるため、初期段階での導入をお勧めします。
この修正により、現在広く使用されている TLS v1.2 以降の暗号化プロトコルを適切に表現し、技術的な正確性を保った内容になります。「SSL 対応」という古い表現ではなく「HTTPS 対応」とし、証明書についても「SSL/TLS 証明書」という現在一般的な表記にすることで、読者に正しい技術情報を提供できます。
ドメインと DNS の設定をミスしない
独自ドメインを使用する場合、Route53 やドメイン管理サービスで DNS 設定を正しく行う必要があります。設定ミスにより、サイトが表示されないトラブルが発生する可能性があります。
A レコードの設定ミスはサイトアクセス不能の原因となります。サブドメインや CDN 設定時の CNAME レコードの設定も注意深く行うべきで、変更前には必ず設定内容を確認しておきましょう。
まとめ
AWS で WordPress を構築することで、従来のレンタルサーバでは実現できない高性能で柔軟な運用環境を手に入れることができます。Amazon Lightsail は初心者向けで簡単に始められ、EC2 は高度なカスタマイズが可能という特徴があります。
メリットとして、サイトの高速化、スケーラビリティ、セキュリティ強化、コスト効率性、カスタマイズ性、グローバル対応などが挙げられます。一方で、技術知識の必要性、コスト管理の複雑さ、限定的なサポートといったデメリットも存在するため、社内のリソースと要件を十分に検討した上で導入を決定することが重要です。
構築手順は複雑に見えますが、ステップバイステップで進めれば確実に完了できます。特に注意点として、定期的なアップデート、バックアップの自動化、メール送信設定、SSL 対応、DNS 設定などを事前に把握しておくことで、安定した運用を実現できるでしょう。
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